味を守れないなら大和蒲鉾でなくていい
背負った看板と支える職人

かまぼこは、東の小田原に対し西の仙崎といわれ、その名が知られる「仙崎かまぼこ」。

伝統的な焼きぬき製法でつくられます。

その歴史は古く、300年以上前、毛利公に献上したのが始まりと言われています。

引き継がれている教えと味

―大和蒲鉾という会社

長門市仙崎で昭和21年からかまぼこを造り始め、昭和38年に法人として設立されました。祖父が開業しましたので、私で3代目になります。

祖父は、もともと広島出身ですが、この地域は魚が豊富ということもあって、ここ仙崎に移り住んで、かまぼこづくりを始めたと聞いています。

私が小さい頃の祖父は、とても厳格で厳しいイメージで、このお店に掲げてある「良い製品、良い技術、良い会社」も創業した祖父が掲げたものです。当時はすべてが手作りで、炭火でかまぼこを焼いていたそうです。

当時から引き継がれていることは、「とにかくきれいにすること」です。

清潔でないところでないと、良い製品はできないというのがこれまでの教えで、毎日の工場等の掃除は魚の臭いが残らないほど徹底しています。深夜に原料であるエソの漁獲量などの情報が産地から入ってくるので、そこで職人の手配を始めます。

原料があるときは、朝7時から製造がはじまりますね。

葛藤の中で芽生えた覚悟

―3代目を継承すること

先代の父が体調を崩したために、父の代わりに日々の業務を行っていました。そんなときに新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、売り上げも伸び悩んでいた事から、父が行ってきた会社について真剣に考えるようになりました。

感染拡大中には、新しいつながりもできたことで「自分で事業を守らないといけない」「絶対に絶やしてはいけない」と思い事業を継ぐ覚悟を決めました。

今は、技術や伝統を受け継ぎ、小さくてもちゃんとしたものを作りたいと考えています。代表に就任してからは、もちろん重責を感じていますが、これまでできなかったことを自分で実現できるようになったので、今後はいろいろと挑戦していきたいです。

味を落とすなら作らない

―国産の生鮮魚しか使わないというこだわり

やはりこだわりは、原料である生鮮魚だと思います。かまぼこなどの練り製品においては、海外産の冷凍すり身を使っているところが多いと思いますが、大和蒲鉾では、100%国産の生鮮魚を使用しています。その上で、生鮮魚用の製造設備を使用して丁寧に作っています。

エソであればいいでは無くて、とにかく原料の品質だと考えています。

冷凍の原料であれば製造も安定すると思いますが、安定を目指すことはやめようと決めています。

原料は生鮮魚としているので、「原料がない時」には「商品はない」という方針としています。

お客様から、他の会社は商品があるのに大和にはないと言われたこともありましたが、第一に品質を守ることを優先しています。これがないと、大和蒲鉾じゃないと思います。

良質な原料の確保に向けて、産地によっては、漁師さんと直接交渉しながら仕入れることもあります。

守ることから挑戦へ

ー自信が持てるものをお客様に届けたい

一度食べたら「ここのじゃないと食べられない」と言ってもらえることがとてもうれしいです。

私は、原料が一度冷凍されると触感が変わってくると思っていますので、商品のきめの細かさ、食べたときの舌触りが全然違うと思います。

これまでは、守ることが目標になりつつありましたが、今後は、無添加商品の開発や魚種を広げる等、やりたかったことにも挑戦していきたいと思っています。

業界自体は、非常に厳しい状況ではありますが、その中でも続けていくことが大切で、従業員を含めてみんなが笑顔になれるような会社にしていきたいと思います。