岡田泰さん

200年続く窯元に生まれた岡田泰が感じる、萩焼の未来と父の背中

窯元で生まれ育ち、自分も作家になるまでのストーリーとプレッシャー、そして若手作家として考えるこれからの「萩焼」についてのお話です。

山口県指定無形文化財に指定されている父「岡田裕」へのリスペクトが感じられる想いにも注目です。

窯元で生まれ育つことの当たり前

萩焼作家岡田泰さん

── 泰さんは窯元で生まれ育ち、継ごうと思ったのはいつ頃ですか?

うちは代々窯元をしておりまして、今私の父で八代目を継いでいます。生まれた時からこの岡田窯に住んでいて、親や祖父、窯で働いている人や出入りの方など皆焼き物絡みの人なので、それが普通と言えば普通でした。なので逆に他の職業を思いつかなかったですね。

── たとえば宇宙飛行士や野球選手になりたかったなど、葛藤は一切なかったのでしょうか。

もっと自由にいろんな仕事をしてみたいと思った時期も少しありました。ですがそれも焼き物を始めてからで、自分が萩焼という陶芸の仕事をやるだろうなと意識し始めたのは高校生ぐらいの時です。

萩の窯元の陶芸家たちは、うちの父世代の諸先輩方も含めて多くの人が大学を出ています。一回外に出て、外の空気を感じ、様々な見識とか知識を学んでまた萩に帰って作陶活動をします。なので大学は美術系の大学に行くという空気感が元々ありました。

── 初めてご自身で萩焼を作った時を覚えていますか?

小学生の頃に、父に言われて簡単なものを作ったことがあります。皆さんがよくやる作陶・陶芸体験がいつでもできる環境でした。今でも残っているようなものだと、4歳5歳ぐらいの時に作ったものがあります。ただ、それは作品というわけではなく、自然と普段の生活環境の中で触れていたものです。

200年の歴史を継ぐことの重み

登り窯

── 泰さんは200年以上続く窯元の後継でいらっしゃるじゃないですか、プレッシャーはどうですか?

プレッシャーもメリットもあります。ゼロからのスタートではないので、もちろん恩恵もありますし、その分出来て当たり前のような世間の目やプレッシャーもありました。

特に最初の頃、京都での修行が終わって萩に帰ってきた時はきつかったです。

プロとしてやっていくので、そのレベルに達していない段階でも、「岡田さんのところなら」と言われるとプレッシャーを感じていました。色々ときつかったですが、全てを糧にしながらメリットの部分は大事にしようなど、意識しながら今日までずっとやっています。

萩焼を日本の代表にするまで

湯呑ナナメしのぎ

岡田窯 窯作品

── 今後、岡田窯の焼き物をこんな風にしたいといった展望はありますか?

岡田窯の焼き物というか萩焼全体ですが、萩焼を日本の焼き物の代表にしたいです。有名どころでは有田焼・備前焼・瀬戸焼・京焼など色々ありますが、その中でも日本の焼き物といえば萩焼と皆さんが言ってくれるように認知度を上げるような仕事をしたいと思います。

これは自分一人でできることではないので、私世代からの若い作家が一生懸命作品を作って発表して、発信して認知度を上げることが大事だと思います。萩焼が日本で一番メジャーな焼き物として世界中で認知されるようにすることが目標です。

そういうつもりで同世代の仲間とも頑張っています。

自分ひとりで頑張るより、仲間と。

萩焼のパーツ

── 泰さんは陶芸家として活動し始めた年からたくさん作品を出展されていますが、それも萩焼を広めるためでしょうか?

最初の頃は、公募展や試験のように結果が出るもので自分のレベルや進捗状況を測りたいというのがありました。

当時は、自分がいい作品を作ってたくさん知ってもらうというより、いろんな世界に出て行きたい気持ちが強かったです。同世代の人とグループ展など活動していく中で、他の産地の作家さんたちとも交流を深めるようになり「唐津の人は今こんな感じで頑張ってる」「備前ではこんなことをやっている」などお互いお酒を飲みながら話すと、じゃあ萩は何ができるのかと考えるようになります。

自分一人で頑張るよりも私は、萩焼自体をもっと知ってもらえばその先に、自分たちに還元されると思うし、その方が面白いと思っています。

普段からたくさん使ってもらえる焼き物として

白釉緑彩タンブラー

── 萩焼をこんな人に、こんな風に使って欲しいという希望はありますか?

萩焼はよく、使えば使うほど馴染む「萩の七化け」という言い方をされています。萩の湯のみやお抹茶椀などは使っていくと貫入(細かなヒビ)が入ってそこに茶渋が染み、味わいが深まっていきます。その特徴を生かすためにも、たくさん毎日使って欲しいです。

ハレの日に使うのもありがたいですが、萩焼の温かみのある焼き物は身近な普段使いのものとして使ってもらえると嬉しいです。

挑戦をし続ける父の背中をみて

作家:岡田泰さん

── 師匠でもあるお父様の作品は、泰さんから見てどうですか?

素晴らしいと思います。父の経歴は私とは違いますが、いろんなコンプレックスを抱えながらもより新しい自分なりの価値観で新しい作品づくりに常に取り組んでいます。

作品の展開も早く、最近も大きい公募展に出す作品で今までと雰囲気を変えたり新しいことに取り組んだりしている姿を見ています。

自分が一つ大成したらそこに留まるのではなく、更に新しいものに挑戦していく姿はすごいと思います。
私はまだ、自分の淡青秞のレベルアップに必死で、次の展開やそのレベルに行けません。それでも、やらなくてはならないので構想を練ってはいるのですが、年齢に関係なくどんどんスイッチを切り替えて進んでいるのがすごいなと思います。

父のようになれるように頑張りたいと思います。

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