淡青釉茶盌

萩焼作家、岡田泰。萩の海が生んだ淡青釉と作家の葛藤

萩で200年以上続く岡田窯の岡田泰さん。作家としての修業期間と、泰さんの代名詞でもある新しい萩焼「淡青釉」が生まれたきっかけ、さらに作品に対しての責任が感じられるインタビューです。

納得のいかない作品を割る時の作家の気持ちを言及している部分では、私たち使う側も考えさせられる内容となっています。

萩を出て、京都での修行期間

okada yasushi

── 勝手なイメージですが、家元で生まれた方はすぐにその道に進むというイメージがあったのですが、泰さんはいくつも学校に行かれているんですね。

東京造形大学に入学し、彫刻を学びました。本格的に焼き物の勉強をしたのは、京都で通った2つの学校です。

── 窯元で生まれ育った跡継ぎの方の中では珍しいのでは?

確かに萩ではそんなに多くないです。京都の陶芸家、いわゆる清水焼とか京焼の子弟を育成するような機関だったので、そちらの方たちが多かったですね。

── 泰さんの作品は、京都の陶芸品に影響を受けた部分が大きいのですね。

京都の香り、しませんか? 私の作品。 (笑)
京都は焼き物に限らず、何にでも京風というものがあります。いろんなものをアレンジするのがすごく上手な土地柄ですので、焼き物に関しても全国の様々な技法を京都風に吸収したいわゆる「はんなり」とした感じなど、基礎的なところを京都で学んできました。

代表作:淡青釉(たんせいゆう)が生まれる

淡青釉フリーカップ

── 泰さんの淡青釉、いわゆる萩焼のイメージとは違った美しさでびっくりしました。

萩焼自体がですね、土味だったり素朴なものです。土の良さ、そこから醸し出される温かみが萩焼の良さだと思うんです。

私が今やっている淡青釉というのは、今までの萩焼にはないもので、萩の素材の良さ、温かみを損なわずに、もう一つアレンジを加えた作品です。

京都の研究機関や学校で陶芸の勉強をさせてもらったおかげでこの技術を身につけたられたと思います。

── このような作品はどういうタイミングで閃くのでしょうか。

萩は海沿いの街なんです。私の家からも歩いて5分ぐらいで海に行けます。学生の頃は自転車、大人になった今は車で海沿いの道を走ることがすごく多くなりました。日々萩の海を眺める中で、このイメージを自分の作品の中に映し込みたいなという気持ちからです。

観光客の方が萩にいらしても、その日の海しか見れないですが、私たちは365日萩の海を見ています。陽の光や天候によって毎日変化する自然の表情を見ていると、それを作品に表現したいというイメージが出て来るんです。

その想いを自分なりのイメージで具現化したのがぼくの淡青釉です。

癒される萩焼を目指して

Yasushi Okada

── 私も焼き物には詳しくないのですが、好きで素人なりによく見ます。ですがこの優しい青は初めて見たのでびっくりしました。

ありがとうございます。私も淡青釉という名前をつけて、激しい色や装飾ではなく穏やかで清涼感のある見てて飽きないような作品を意識しています。
毎日使っていて、心が癒されて欲しいという想いを込めています。

── 完成までにどれくらいかかったのでしょうか?

それまでに勉強していることもあったので、閃いた時から作り出して1年程で最初の色を出すことが出来ました。

そこから今でも、まだ完全に完成しているとは言えないのですが、より品のある美しさを求めて少しずつ原料などを変えながら、クオリティを上げるようにしています。

── 初期の頃の淡青釉と今の淡青釉は違うのでしょうか?

ちょっと違いますね。たまたま最初は運よく良い色が出たので、次は再現する事とさらにクオリティをアップするという両方が必要です。

作品への責任から割ってしまう作品たち

萩焼作りの様子

── 作る中で失敗もされるわけではないですか。作品の完成度が納得いかない時に割るという話を聞いたのですが本当でしょうか。

作品自体、ギリギリを狙う事が多いので失敗するともちろん割りますし、割るのが忍びないものは家で使ったりします。

── そうなんですね。素人なのでもったいないなと思ってしまいます

そうですよね。難しいのはやはり、それだけクオリティを求める事とお客様の手に渡る事を考えると中途半端な物は出せないので。最近は特にSNSが発達しているので、自分が納得していない不本意な物が出ると影響も大きいです。結局自分が悲しい思いをしてしまうので、泣く泣く割ります。

── わざわざ割ってしまう理由は何でしょうか?

昔は各窯元に物原という焼き損ないを捨てる専用の場所がありました。焼く前の土は水に溶かせば元に戻りますが、焼くと元に戻らないので細かく砕いて敷き詰めてそこからまた長い時間をかけて大地ができるという流れです。あとは、大きいものだと邪魔になるので、細かく砕くという理由もあります。

いずれにせよ一生懸命作るので割る時は心を無にして割ります。(笑)

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