420年の伝統と今。陶芸作家「波多野英生」が考えること

萩焼の420年の歴史と伝統を受け継ぎ、今も第一線で作品を作り続けている窯元「波多野指月窯」。今回は、波多野英生さんへのインタビュー前半です。

波多野指月窯の萩焼体験ツアーを企画しているNTAトラベルが指月窯の特徴やこだわり、歴史についてお伺いしています。

歴史を感じる街での萩焼づくり

波多野指月窯

── 波多野指月窯が始まったのはいつ頃ですか?また、特徴はどういったところでしょうか。

戦後すぐにひいおじいちゃんが始めたと聞いたので、ちょうどそろそろ80年ですね。

特徴としてはまず、立地が萩市の堀内地区というところにあります。ここは、伝建地区に指定されていて、山口県の中でも歴史の風情が感じられる場所です。そういった環境で製作しているのは、萩の窯元でも珍しいと思います。

伝統的建造物群保存地区のこと。城下町、宿場町、門前町など全国各地に残る歴史的な集落・町並みの保存のため、我が国にとって価値が高いと判断したものを選定する制度。※文化庁ウェブサイトより

素材の全部を把握すること

波多野指月窯三代目

指月窯と他の窯の違いは、ろくろや粘土を作るところ、薪割りなどなるべく素材を一から作る事を心がけています。全部の素材を把握したいという考えが強いので、手間は相当かかりますが今のところはそうしています。

── 私びっくりしました。以前お伺いした際に、波多野さんがここまでやるんだと思って。

そうですね。割ってある薪を買う人もいるし、すでにその前から薪を使ってない人も多いですが、うちは80歳の父と僕と従業員1名、みんな薪割りをしています。

そしてなるべく、金銀装飾という作風よりも素材の良さを活かしながら作って焼くというこだわりを大事にしています。


波多野英夫さんの作品をチェック

420年廃れなかったから今がある

指月窯の作品

── 陶芸作家としてのやりがいや大変だと感じることを教えてください。

萩焼は伝統工芸とか言ったりしますよね。萩焼の歴史は大体420年なんです。420年で伝統工芸と言うとやはり皆さん伝統的なものを守っていると言います。

420年続いてるという言い方もできるけど、逆に廃れていないから420年続いているんですよ。

やはり、萩焼もずっと同じものを作っていたら廃れていたと思います。実際は廃れるよりも需要が無くなって売れなくなりますね。

だから少しずつ進化をしなくてはと常にアップデートは考えています。現代の食生活や住居だったり、若い人がどんな好みなのかを調べつつ、自分でも欲しいものを感じながらさじ加減を考えています。

── 伝統的なものと世の中の流れのバランスみたいなところですね。

そこのバランスが、一番悩んで難しいところです。

究極の六次産業とその責任

波多野英夫さん

やりがいは、以前友人に言われた言葉が印象に残っています。
「お前のところの仕事は究極の6次産業だな」って言われたんですよ。(笑)

一次産業は農家や漁師です。僕らに関しては土を掘ってきて原料を作っています。
二次産業で製造業。僕らは作ってろくろをして焼く事です。
三次産業でお店に並べたり東京の展覧会行く。

一、二、三全部やらなくてはいけないなと。
面白くもあるけど売れても売れなくても全部自分のせいなんですよ。どこが悪いって言い訳ができない。販売が悪いとか仕入れてきたものの品質が悪いとか言い訳はできません、全部自分のせいです。

それがやりがいと面白さと責任全部です。

現代でも使える萩焼作りを

萩焼の制作風景

── 現在でも使えることをモットーにということですがどのようなところでしょうか。

現代はまず料理が違うと思います。うちの親の時代は、まず五客六客とか組(セットのこと)が基本でした

今の時代は基本的に組はすごく少なくなっています。あとは電子レンジ対応や収納時の重なりだけではなくて、洗いやすいか高台に手がかかりやすいかなども大事です。

洗いやすくないと毎日使わなくなる。そこからだんだんと食器棚の奥の方に行ってしまい、最終的に使わなくなるというのはよく言われますね。

萩焼のお皿

展覧会の会場では、男性は面白ければ買ってくれますが、女性はすごくシビアです。でも、僕としては会場で直接「高台をこうやって持てないと洗えないよ」など教えてもらえることが、新しい作品作りの参考になっています。

だからといって意識しすぎると無機質で量販店の食器のようになってしまうので、バランスの良い落とし所は考えるようにしています。

── 難しいですね。。

難しいです。使いやすさと個性と。自由に作っても良いのですが、ある程度縛りがある中で生み出さなきゃいけないのは、難しいですが半面、面白いと思います。「この手があったか」という発見です。

縛りがある中で作る楽しさ

焼く前の萩焼

── 縛りがあるほうが逆に作りやすいんですか?! 作家さんは自分の作風で自由に作っているイメージでした。

意外と何でも好きに作れと言われると難しいかもしれませんね。そういうオブジェ寄りとか使用用途を考えないのも面白いです。

用途がある中で考えろと言われると窮屈ですが、作り手のセンスを問われると思います。センスがいい人は色々作ってもセンスがいいんです。

 

地元山口にいれば目にする機会の多い萩焼。あって当たり前のものでしたが、420年続いているのはやはり時代に合わせて進化してきたからだと感じました。後半は、波多野指月窯ならではの萩焼体験ツアーについてお伺いしています!

後半の記事

萩市の波多野指月窯「波多野英生さん」へのインタビュー後半は萩焼体験ツアーについてです。他のツアーとは一味違ったプレミアムな体験ができるツアーについてお伺いします! [sitecard subtitle=前半の記事 url=https:[…]

波多野英生プロフィール
多摩美術大学彫刻科卒業後、京都市立陶工高等技術専門校成形科修了。
さらに、京都市工業試験場修了の後、父善蔵に師事し技を学ぶ。
400年の伝統文化を継承する責任感を胸に、土と炎で自らの感性や思考を表現し続ける。
日本伝統工芸展入選など数々の受賞や個展を重ね、現在に至る。
父・善蔵氏は、文部大臣賞などの多数の受賞歴に加え、平成14年には山口県無形文化財の一人に指定された。