萩焼について
山口県の萩市で作られる「萩焼」は、伝統的工芸品として国に指定されている236種類*の工芸品の中の一つです。萩市内には現在も多くの窯元や萩焼専門店があり、日々新しい作品が生まれています。
萩焼は主に茶の湯の道具として親しまれてきました。素材である土の風合いを充分に活かし、絵付けもほとんどないため、飾り気はないけれど味があり、安心するような温かみを感じる焼き物です。
今では、茶道具の他にもお茶碗やお皿をはじめ、タンブラーや花瓶など現代の私たちの暮らしに寄り添う器としても広がりを見せています。
*出典:経済産業省
萩焼の5つの特徴
広義での陶磁器として遡ると、日本での始まりは縄文土器の縄文時代。いつの時代も不変の衣食住を担う大切な道具として、人類の進化と共に日本中で発展してきました。
陶磁器の中でも伝統的工芸品として指定されているのは32種類。信楽焼や美濃焼、益子焼など全国に数多くの種類がある中で、萩焼の特徴とはどのようなものでしょうか。特徴を知ることで、家にある萩焼、これから手にする萩焼の見方が変わってくるはずです。
1.七化け(ななばけ)
萩焼と調べると、必ずといっていいほど「七化け」という言葉を目にします。萩の七化けとは、使っていくうちに見た目が少しずつ変化してくる様を表した言葉です。
萩焼の土は粒が荒く、窯で焼いても締まりが少ないのが特徴。そのため、外からは見えづらい細かな隙間が沢山あり、そこにお茶やお酒が染み込んで使い込むほどに色合いが変化してくるのです。
2.土について
作り方は真似できても素材となる土はその土地にしかありません。萩焼の基本となる大道土(だいどうづち)は山口県防府市で取れる土で、砂が多く色は青白色。萩焼の温かな風合いの元になっています。
もう一つは地元萩市の沖合にある見島で取れる見島土(みしまつち)。鉄分を多く含むため赤黒い色が特徴です。
主にこの二つを作家独自の配合で混ぜ合わせ、作品の元となる粘土を作ります。
3.高台
器の足となる高台。萩焼では切り込みが入った切高台をよく見かけます。これには諸説ありますが、毛利藩の御用窯だった当時、庶民でも使えるようにあえて傷を付けていたという話が有名です。器一つで、日本の歴史・浪漫を感じることが出来るのです。
4.釉薬(ゆうやく)
焼き物には、形を作って素焼きを行った後の釉薬という工程があります。うわぐすりともいわれるこの作業には、色付けやコーティングで強度を増す役割があります。
釉薬の原料は、草木の灰に鉱物を加えたものと藁の灰などを合わせたもので、これが不思議とガラスコーティングのようになるのです。土と同じように配合や粗さ、あえて不純物を残すなど変化を加えることで仕上がりが変わり、萩焼のバリエーションに繋がってきます。
5.窯変 (ようへん)
左の湯呑が窯変によりピンク色になっている
釉薬や焼成の炎、焼き物の素材などの具合により、意図せず焼き上がりの色が変わることを窯変といいます。
萩焼でも、白濁する釉薬は通常焼いても白く発色するのですが、まれに薄いピンク色に変化することがあります。窯変は登り窯と呼ばれる窯でしか出現しないため、焼物の中でも希少価値が有るものです。
萩焼の歴史
萩焼と呼ばれるようになったのは明治時代以降ですが、始まりの歴史は古く、今から400年以上前の江戸時代です。当時は、藩に献上品を作らせるための窯、御用窯が日本の各地で開かれました。
その中で萩藩は、初代藩主であった毛利輝元の指示により、朝鮮からの陶工を中心に、主に朝鮮式の茶碗を作り始めたのが萩焼の始まりと言われています。
その後、時代の変化により一時衰退し、窯の数も減少してしまいましたが、明治時代の茶の湯人気の再燃により再び息を吹き返します。
「一楽、二萩、三唐津」茶道の世界で今でも有名な格付けは、この頃に出来た言葉です。
萩焼の使い方と注意すること
萩焼の良さでもある七化けですが、使い始めはその特徴でもあるわずかな隙間から、中身が染み出てしまうことがあります。使い続けるうちに隙間が埋まり、唯一無二の味わいが現れるとともに漏れることは無くなりますが、漏れが気になる場合には、片栗粉やお米をお湯で薄めた液に浸し、乾燥させる工程を繰り返すことで漏れが治まります。
七化けを楽しみながら、自分だけの器を育てていくことが、萩焼の一番の醍醐味なのです。
現地の人と萩焼
毎年行われる萩焼まつりの様子
地元萩では、毎年開催される萩焼まつりや小学校や幼稚園行事での萩焼作り、結婚式の引き出物など、年代を問わず萩焼に触れる機会が多くあります。
茶碗や湯飲みなど、日常使いの食器としてごく自然に生活の一部として存在しているのです。
また、小料理屋やカフェのカップなどで萩焼を使用しているお店も多いです。萩に来たら、是非お店の器にも注目してみてください。お店ごとのこだわりを感じられるかもしれません。
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