人形から器まで、光沢が美しい山口県の伝統工芸品「大内塗」

木や紙などに漆(うるし)を塗り重ねて作る工芸品の漆器。みなさんはどんなものを思い浮かべるでしょうか。お椀や箸、重箱などの食器としての利用、特にお祝いの席での印象が強い方も多いと思います。

漆はもともと、漆の木がアジアにのみ自生していることから、その技術も日本や中国を中心に発展し、日本国内でも各地で広がりを見せました。

本記事では山口県の大内塗の特徴や魅力について解説していきます。

山口県の大内塗

大内塗販売店舗

山口県を代表する文化として、「萩焼」「赤間硯」と並び国の伝統的工芸品に指定されている「大内塗」。

昔ながらの器や箱はもちろん、最近では壁掛け時計やけん玉といった作品に加え、ピアスなどのアクセサリーやストラップ、アマビエ人形など、若者が手に取りやすい作品も多数作られています。

大内塗の歴史

大内塗を知るにはまずは歴史から知るとスムーズです。

現在、小京都と呼ばれる町は全国各地に約40ヶ所あり、その中でも山口県山口市は「西の京都」と呼ばれ、室町時代の一時は京都をしのぐほど栄えていました。

当時、学者はもちろん、茶の湯、歌、能、水墨画など様々な分野の名手が集まり、各分野が山口で発展したのです。

その中心となった大名こそが大内氏。当時、中国/九州地方を統治し、中国・朝鮮との貿易で財を築き、後に大内文化とも呼ばれる時代を作り上げました。

この時に、漆塗職人が製作した漆器が、大内塗の始まりと言われています。その後江戸時代に一度衰退したものの、明治時代になって復活し、現在まで至ります。

大内塗の特徴

1.大内朱と優雅な模様

大内塗の模様

大内塗の特徴の一つは「大内朱」(おおうちしゅ)と呼ばれる深い赤色です。赤と茶色の中間のような重厚感のある色味が品の良さを醸し出しています。

柄は大内塗の始まりとなった大内家の家紋である「大内菱」を金箔であしらい、秋草模様を施していることが多いです。

2.大内人形

大内人形

漆器といえば会津塗や輪島塗なども有名で、どれも椀など器としての作品がメジャーです。

一方、大内塗では「大内人形」という漆器のなかでも珍しい人形作品が最も有名なのです。

大内人形の始まりも大名・大内氏であり、京から嫁いできた花嫁が寂しくないように、人形職人を呼び寄せ作らせたものと言われています。

丸いコロンとしたフォルムが可愛らしく、その所以から夫婦円満の象徴とされ、縁起が良く、お祝い時の贈り物やひな人形でも人気の作品です。

山口開府650年記念のゆるキャラ「おおちゃん・うっちー」も大内人形をモチーフにしている山口市を代表するキャラクターです。

3.萩焼とのコラボ

近年では、萩焼との伝統工芸コラボとして「山口陶漆器」という作品も誕生しています。

萩焼の器に大内塗を施すこの作品は、焼き物強度に漆器の美しい光沢や手触りが合わさった新しい工芸品として注目を集めています。

萩焼の貫入(ヒビ)に漆が入ることで萩の七化けを楽しむことも出来ます。

大内塗の職人

大内塗職人

大内塗の職人は、木地師(きじし)と塗師(ぬし)に分かれています。

木地師は原木の乾燥から選別、加工という椀や人形の形を作る職人。作品は1ミリ2ミリのズレで出来が変わってしまう非常に繊細な世界だそうです。

塗師は、木地師が作った作品に漆を塗り重ねる下地処理と塗装、絵付けなどの装飾を行います。漆は塗り重ねるのが基本です。絵付けも一色ずつの加工となるので一つの作品に最低数か月かかり、大がかりなものだと年単位の時間がかかります。

それぞれ全ての工程を手作業で行い、職人同士の連携で出来上がる大内塗はまさに職人のみがなせる業なのです。

種類と使われ方

大内塗湯飲み

大内塗は、代表となる大内人形の他、盆・茶器・花器・重箱・硯箱・椀・箸など数多くの作品があります。漆塗りは、お手入れが大変というイメージもありますが、きちんと扱えば耐久性も高く、長く使うことが出来ます。

漆器は直射日光や高温に弱いため、食洗器の使用などはまだ難しいですが、まずは特別な日に使うものとして取り入れてみると良いかもしれません。

また、大内塗のひな人形は、コンパクトで場所を選ばない為、現代の都会のお家にも最適です。

贈り物として

大内塗夫婦箸

昔から、箸は「幸せの橋(箸)渡し」といい、縁起物とされています。大内塗でも、夫婦箸や長寿箸など種類も様々で贈り物にもよいでしょう。また、箸は直接口に入るため、食器の中でも特に大切だと言われています。

大切な方への贈り物として、日本の伝統工芸品を是非ご検討ください。